例会報告 1997年9月

「中小卸売業における物流コスト算定」

中林 靖雄

1.流通業における物流の動向

−「製販統合」、「戦略同盟」等と呼ばれる新たな取引システムの構築−

  1. 小売業による淘汰、選別
  2. ・取引を継続する為にはEDI導入が必須

    ・メーカー、有力卸売業との先進的取り組みによる中抜き

    −ECR(エフィシエント・コンシューマー・レスポンス)

    −QR(クイックレスポンス)

    ・有力卸売業への窓口問屋制による集約

    ・小売業の物流センターへの納入要請とセンターフィー(施設使用料)の徴収

  3. メーカー、大手卸売業による淘汰、選別
  4. ・協業化、共同事業の要請

    ・生き残りをかけた大手同士の合併、大手への吸収

     

2.中小卸売業の影響と取り組み(平成9年度 中小企業白書・大阪経済白書から抜粋)

  1. 「製販統合」「中抜き」による影響
  2. ・半数はなんらかの影響を受けている

  3. 仕入先、販売先の積極的な卸売機能の取り組み
  4. ・仕入先 販売先への配送、商品の在庫、ピッキング、流通加工

    ・販売先 メーカーからの調達、商品の在庫、ピッキング、流通加工

  5. 同業者や異業種との協業化・共同事業の実施
  6. 情報ネットワーク活用による製配販の連携への取り組み

 

3.中小卸売業の課題

  1. EDI、EOSへの取り組みは、手書きからコンピュータへの初期導入における効果は意外と簡単に実現できる。しかし、導入は中・長期的に多品種少量の発注、緊急受注の増加等による物流コストのアップにつながる。
  2. ECR・QR、共同化・協業化は、基本的に双方のメリットを追求する為の取り組み。しかし現状においては最終目的を取引継続の為行っている為、コストに基づく価格の交渉等が行えた為、結局物流コストの削減が実現できない。

   

最低限早急に自社の物流コストを把握する

 

4.物流コスト算定における取り組み

  1. 運輸省より昭和51年「物流コスト算定統一基準」公表
  2. 悪化した物流環境を改善する為、通商産業省より平成4年6月に物流コスト算定と活用の詳細な指針として「物流コスト算定・活用マニュアル」公表
  3. 中小企業でも容易に活用できるように、よりわかりやすく簡易な内容にしたマニュアルが平成5年3月に中小企業庁より「わかりやすい物流コスト算定マニュアル」公表

 

5.わかりやすい物流コスト算定マニュアル

  1. 物流コストの算定方法として、容易なステップTから詳細なステップWまで用意しており、ニーズ・レベルに応じて選択が可能である。

<参考資料>

ステップ1

表1    物流コスト表

ステップ2

表2    物流コスト表

A表   物流活動関連データ表

ステップ3

表3   作業別物流コスト表

B表   個人別作業時間表

C表   作業別床面積表

ステップ4

表4−1 商品群別物流コスト表

表4−2 商品群別単位当たり物流コスト表

 

6.物流コスト算定の新しい動き−物流ABC−

  1. ステップ3の作業別コスト計算、ステップ4の活用目的別コスト計算は、活動基準原価計算における活動費の計算に該当する。さらに、取引先別・顧客別を的確に反映した配賦基礎データを入手すれば計算は可能である。
  2. 活動基準原価計算(Activity-Based Costing :略してABC)

コストの配賦計算に必要な「資源ドライバー」やコスト計算に必要な配賦基礎データである「活動ドライバー」が適時・正確に入手できることを前提にすればコスト計算の手法としては適切な手法である。

What(費目・資源)とWho・Where(部門)に加えて、How(活動・プロセス)とWhy(コスト・ドライバー)の情報を提供する手法である。

従来の曖昧な配賦方法に比べて、現場感覚と一致するため、現場を巻き込んだ幅の広い改善が可能である。さらにWhatIF分析によって、コストドライバーを変えることによるさまざまな代替案の評価や優先順位づけが容易にできる。

ABCの原価情報の精度については、十分な考慮が必要である。活動データ収集に際して、便宜上かなりの簡易化と仮定になるため、精度上の問題が残ることは避けがたい。よってデータ収集の自動化や、反復的、継続的な収集の工夫が必要である。しかし精度が悪いから有効でないのではなく、精度を向上させることが改善の一歩でもある。

 

7.現状における物流コスト算定の限界

  1. ステップに基づいて算定した企業において物流コストの把握は可能であるが、同業種における比較が不可能である。
  2. 入力する為に月単位の数値が殆どだが、ほとんどの会社で月次決算ができていない為、ステップに基づいて記入すべき数値(データ)の入手が困難、また算定が不可能な為大部分が推定と成らざる終えない。
  3. 必要なときに商品別・顧客別にコストの把握を行いたいが、適時・正確に入手でいない為継続して行うことが難しい。
  4. 物流については、特に省力化を目的とした情報化の為、コスト算定に必要なデータが収集されていない。
  5. 「中小卸売業におけるコンピュータの利用状況実態調査」によると、売上管理(80%)、顧客管理(66%)、受発注管理(56%)等にコンピュータを活用

  

8.中小卸売業の物流診断

  1. まずは簡単な問診による診断
  2. ・運用ルール、作業効率、受発注業務

    ・在庫管理、配車/配送計画

  3. 簡単に物流コストの概算を把握する
  4. ・「中小企業の原価指標」を利用して比較

    ・月次ではなく年次(決算)の損益計算書を利用

    ・表計算などを利用して各種シュミレーションを行う

  5. 「わかりやすい物流コスト算定マニュアル」の実施
  6. ・継続して行うのではなく、あくまでも現状の予備診断が目的

    ・実施した結果と概算との対比

  7. 既存の診断手法を利用して診断

・問題点が数値とともに明確

・事後指導において利用可能

 

9.サプライ・チェーン・マネジメント

  1. ロジスティックス=サプライチェーンマネジメント(企業間統合)
  2. ・計画・オーダーの流れ

      −POS情報に基づく計画・オーダープロセスの確立

      −EDI、VAN

    ・物の流れ

      −最終顧客まで物の追跡可能なシステムの構築

    ・サプライヤーから最終顧客に至るまでの各チャネル全体

    −「物の動き」の「全体最適」

    −QR(クイックレスポンス)、ECR(エフィシエント・コンシューマー・レスポンス)

  3. トータルロジスティクスコスト

物流 調達物流コスト 持込・引取運賃
原材料在庫維持コスト
原材料保管コスト
原材料荷役コスト
原材料価格
社内(工場内)物流コスト 包装費
製造ロット切替費
販売(製品)物流コスト 輸送コスト
在庫維持コスト
保管コスト
荷役コスト
静脈(返品)物流コスト 回収輸送コスト
処理・廃棄コスト
情報流 情報流コスト

10.中小卸売業の今後の動向

  1. 販売  SCMラベル
  2. 物流  無線携帯端末(カートピッキング、シールピッキング)
  3. 会計  月次決算、日次決算
  4. 人事給与 実績に基づく能力給

   |

「miniERP」

Activity-Based Costing

大福帳型統合DB

・SCM(出荷カートン識別)ラベル −Shipping Carton Markingの略−

小売り側からの発注を受け取った後、商品を箱に梱包する際に個々の商品についているJANコードを読み取ってその箱に何が入っているか簡単に識別するためにSCMレベルをはって出荷する。これに伴い出荷前にこの情報を事前に小売り側にEDIを使って伝送する。小売り側にてバーコードを読み取る事により、大量で煩雑な検品検収作業が簡略化され、ミスを防止することができる。

<参考文献>

卸売業のパ−フェクト物流 /麻田孝治著 /産能大学出版部 /1996

徹底チェック!サクセス卸物流のすすめ /菊池康也著 /日本工業出版 /1996

コンシュ−マ−・レスポンス革命 /岩島嗣吉,山本庸 /ダイヤモンド /1996

ABCマネジメント理論と導入法 /アーサーアンダ /ダイヤモン /97003472

ABC・ABMの基礎テキスト /陳 豊隆 /日本能率協 /96051608

ABCマネジメント革命 /R.クーパー/日本経済新 /95016407

間接費の管理 /桜井 通晴/中央経済社 /95006626


活動報告のインデックスへ戻る